83 豊島ミホ/ブルースノウワルツ

ブルースノウ・ワルツ

ブルースノウ・ワルツ

装丁がひんやりと涼しげで素敵。装丁が素敵な本は、それだけで欲しくなる。本屋さんでつけてもらうカバーを、なかなかはずせないくせに。
表題作があんまりに衝撃的すぎて、グラジオラスのインパクトが弱い。グラジオラスも、切なくてすごく良いのに。
楓の時代(それがいつごろなのかわからないけれど)に、楓がほんとうにしあわせになることなんてきっと難しいのだろうけれど、それでも、彼女の過ごすこれから、が、あまり憂鬱なものじゃなければいいと思った。選択肢がある、ということは、シアワセなことなのだなぁと改めて思う。
やりたいこともやれないままに、婚約者と結婚して飾り物になるだなんて、耐えられそうにない。舌を噛み千切って死んでしまったほうが、ずっと楽じゃないのかと思うけれど、時代にはその時代の生き様があるのだ。選択肢を与えられてしまったわたしが耐えられなくとも、楓は耐えるしかない人生なのだ。
そう思うと、今生まれてよかったのかもなーと思う。小学生の頃からずっと、後10年前に生まれておきたかったと思っていた。そういえば、そういうことも考えることがなくなって、大人になったんだなぁと思った。小学生の頃、あと10年前に生まれていたかった一番の理由は、自然破壊だなんて、かわいかった。
あのころは、10年・20年後に、南極と北極の氷が全て融けて、ひどい津波が襲ってくるとか、食料自給率がどんどん下がっていって食べるものに困って戦争が始まるとかそんなことに日々怯えていた。それはひょっとしたらとても現実的なことなのかもしれないけれど、今は目の前のことに忙しくて(大学にバイトに趣味と趣味と趣味と。)、そこまで頭が回らないのだ。今思うと、面白いよね。もっと単純に過ごせばいいのにね(笑)
ユキの人生はどうなってゆくのか、楓以上に気がかりで仕方ない。まに子は大丈夫。忘れることは罪じゃない、死を認めることはうしろめたいことじゃない。だから大丈夫だと思うけれど、ユキは不安だ。時代もストーリーも違いますけどね。