90 島本理生/波打ち際の蛍

波打ち際の蛍

波打ち際の蛍

あぁこの人の作品と出会うことが出来てよかったと心底思いました。好きな作家はたくさんいるけれど、こんなにも芯から揺さぶられることなんてなっかなかないのです。
ふとした言い回しがとても素敵だったりかわいかったりする。幸福すぎる絶望、という言葉が頭の中に凄く残っている。さらりと、自慢したくなるほど、という子供みたいな無邪気さを含んだ言葉が出てくるとかわいらしすぎて笑いたくなる。
麻由の気持ちが痛いくらいに伝わってきて何度も何度も泣きそうになって、それでも麻由が蛍を失うことがありませんようにと祈るように思いながらただただページを捲り続けた一時間でした。
ほんとうにこの人の作品が好きだなぁと思った。
まあDVですねはいはい^^とも思うし、少女マンガっていうか厨っていうか…ていう嘲りを誰かが言っている気もするけれど、それでもわたしはこんなに凄い人はいないと思うんです。このへんは本家ダイアリで語ります。
さとる君はひだまりみたいだなあと思いました。時折日差しがきつすぎて汗が流れてくるようなところもまたいい。彼に対する麻由の気持ちはきっと揺るぐことがなくて、蛍がそれにいくら嫉妬しても無駄だし、それでも蛍は絶対に麻由から彼を奪わないだろうと思った。大人だけれど子供みたいな執着心や欲望や、そういうものをきちんと持っている蛍はどこかかわいくてほんとうに素敵だと思ったし、麻由のことを弱いなんてちっとも思わなかった。そういう風に思わせる、島本さんの文章と、彼女の価値観や考え方、その根底にあるものが、わたしはやっぱりほんとうにほんとうに大好きです。あんまりにも揺さぶられすぎて泣きそうだった。感動とかではなくて、あぁこのひとはなんてすごいのだろう、という、尊敬です。