107 デュ・モーリア/レベッカ(下)

レベッカ (下) (新潮文庫)

レベッカ (下) (新潮文庫)

はうああああああああ恐ろしく素晴らしいサスペンスでした。
下巻の序盤から物語が一気に展開していく。ひとつひとつのシーンの緩急が素晴らしい。
舞踏会の衣装から一気にマキシムとの間に溝が出来、ダンヴァーズ夫人に詰め寄ると絶望に落とされる。それまではとにかく主人公に対して攻撃的であざけっていたのに、そこで突然同情的になることで、ダンヴァーズ夫人は主人公を意のままにあやつる。そうやってぐっとダンヴァーズ夫人の世界にひきこまれた主人公と夫人を呼び戻す信号砲から、怒涛の展開。マキシムの独白から、主人公が小娘から妻になり、そうなることでマキシムにとっての主人公の魅力の一番大事なところが失われてしまう。描写のひとつひとつがぐっとリアルに迫ってきて夢中で読み終える。
主人公は結局、マキシムを手に入れたけれど、マキシムははつらつさを失い、マンダレーすら失う。それは果たしてほんとうに、手に入れたことになるのか、っていうとおそらく答えはノーで。マキシムと主人公はレベッカに振り回され、ようやく開放されたと思ったら、彼らはマンダレーを失い、マキシムは生気を失い、主人公にどっぷりと依存して生きてゆく。ほんっと素晴らしい作品でした。