2 角田光代/エコノミカル・パレス
- 作者: 角田光代
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/10
- メディア: 単行本
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わたしには、彼女が自分の生活にほとほと嫌気がさしているのがわかる。けれど、周りの人間はそんな彼女の思惑に気づかない。踏み出す勇気も出ないから、悪循環を繰り返すばかりで。もしかしたら、誰かからしたら簡単に鼻で笑えるくらい、どうしようもないのかもしれない。けれど、彼女にとってはそんなに簡単なことじゃない。それは、現実的な不安となって、私を物語の中に引きずり込む。ページをめくる手は、物語をちゃんと追えているかなどさして気にもせず結末に向かう。流れるストーリーは予期していたもので、彼女は結局、根本的に変わらないまま物語は終わる。その中に流れる、どうしようもない無気力感みたいなものに、わたしはどんどん引きずり込まれる。どうにかなるという楽観が、わたしを苦しめる。読んでいてこんなにしんどくなる作品を書くのは、わたしにとって、まだ角田さんだけだ。特に、彼女や彼らが、東南アジアを放浪していたりする小説は、わたしをどうしようもなく不安にさせる。けれど、わたしは読まずにいられない。なんだかもう、ほんとうに自分でも不思議。