80 よしもとばなな/王国 その3 ひみつの花園

王国〈その3〉ひみつの花園

王国〈その3〉ひみつの花園

これでシリーズ完結、かな。わたしはすごく好きだった。
ばななさんの作品は、運命だとか予感だとかっていうものが頻出するし、むしろばななさんの世界にとってそれはとても大事なものだということはわかっていたんだけど、これで改めてその事実を突きつけられた感じでした。
そういう感覚だとか考えを、信じない人やバカにする人もいるんだろうけど、わたしは尊んでいるし、どこかで信じてもいるし、そして素晴らしいものごとだと思う。そして、そうやって思える自分はどこかで誇りでもある。
実際、そういうのはわたしの周りにいる人たちに似たものがあって、その人たち皆がすべからく自分の選択や決断に、後悔したってきっちり整理して進んでゆけるひとたちだからなのだとは思うけど。
運命を言い訳にせずに受け止めて、それは自分の力や考えゆえなのだと、彼女達はそうやって現実に、地に足をつけて生きてる。彼女達の現実に。それはとてもパワフルで、だけどゆったりとしてて、マイペースで、ほんとうに素敵なのだ。うらやましくなるくらいに。
そんな彼女達のまとう空気と、この小説の空気は、根底のところがすごく似通ってて、だから雫石のことが大好きだった。あと片岡さんね。彼は凄い素敵な人だなぁと思った。
雫石にとって全ての出来事はなくてはならなかった。そうでなくては得なかった色んなものごとがあるし、雫石のすごいところは、あの時ああしていればっていうことを考えずに、ただただ結果と向き合って、時には逃げながらも、後悔をしなかったところだと思う。誰もあんな風には生きれないし、それは雫石の考えを借りれば、山の生活でのおかげだし、まわりのひとたちのおかげ。そうやって築かれてる雫石という人そのものが、素晴らしい人だとわたしは思った。楓にしろ、雫石のおばあちゃんにしろ、同じように感じた。